文書を電子化する前に、まず「何のために電子化するのか」を考えましょう
企業や自治体が保管している紙文書を電子化する場合、最初にスキャナーを用意して、とにかく紙を読み取ればよいというわけではありません。
電子化を成功させるためには、スキャンを始める前に、
- 何を電子化するのか
- なぜ電子化するのか
- 電子化したデータをどのように使うのか
- どのような仕様でスキャンするのか
- 電子化後にデータをどう管理するのか
- 紙の原本をどうするのか
を決めておくことが大切です。
特に大量の文書を一度に電子化する場合、事前準備が不十分だと、途中で仕様を変更することになったり、不要な資料までスキャンしてしまったり、電子化した後に「必要な資料が見つからない」という問題が起こったりします。
本記事では、文書の電子化を始める前に確認しておきたいポイントを順番に解説します。

文書を電子化する前に確認したい8つのポイント
文書電子化で失敗しないためには、次の8項目を事前に確認しておくことをおすすめします。
- 電子化する目的を明確にする
- 電子化する資料を整理する
- 原稿の種類・状態・数量を確認する
- 電子化後の仕様を決める
- ファイル形式やデータの整理方法を決める
- セキュリティ対策を確認する
- 自社対応か外注かを判断する
- 電子化後の原本・データの扱いを決める
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.まず「何のために電子化するのか」を明確にする
文書電子化で最初に考えるべきなのは、「何のために電子化するのか」です。
例えば、企業が紙資料を電子化する目的には次のようなものがあります。
- 書庫や倉庫の保管スペースを削減したい
- 必要な資料を検索しやすくしたい
- 社内で資料を共有したい
- 拠点間で情報を共有したい
- オフィス移転を機会に資料を整理したい
- 紙資料の劣化を防ぎたい
- 災害時に備えてバックアップを作りたい
- DXやペーパーレス化を進めたい
重要なのは、目的によって適切な電子化方法が変わることです。
例えば「保管スペースを減らしたい」という目的なら、閲覧しやすいPDFとして保存することが中心になるかもしれません。
一方、「過去の資料を検索して業務に活用したい」という目的なら、OCRやファイル名、インデックス情報などを検討する必要があります。
DX、ペーパーレス化、BCP、固定費削減など、電子化の目的によって方法を変えることが重要です。
2.電子化する資料を整理する
目的が決まったら、次に電子化する資料を整理します。
例えば、
- 契約書
- 請求書
- 稟議書
- 報告書
- 議事録
- 帳票
- 技術資料
- 顧客資料
- 図面
- 過去の社内資料
など、資料の種類を確認します。
このとき重要なのが、「保管されている紙を全部スキャンする」という考え方を一度捨ててみることです。
長年保管している資料には、
- 同じ資料が複数ある
- すでに不要になっている
- 最新版だけ残せばよい
- 他部署にも同じ資料がある
- 保存期限を過ぎている
といった資料が含まれていることがあります。
電子化する前に整理すれば、スキャンする量そのものを減らせる可能性があります。
大量の紙資料では、スキャン前の仕分けや付箋・クリップの処理などが作業時間に影響するため、事前準備が電子化費用にも関係します。
3.原稿の種類・状態・数量を確認する
電子化する資料は、すべて同じ方法でスキャンできるとは限りません。
例えば一般的なA4サイズの事務書類であれば、複合機などに搭載されているADF(自動原稿送り装置)を利用できる場合があります。
しかし、
- A3より大きな資料
- A0・A1・A2などの大判図面
- 製本された資料
- 古い資料
- 破れやすい資料
- 厚みのある資料
- 和紙など特殊な紙
- マイラーやトレーシングペーパー
- 写真や絵画
などは、一般的な複合機だけでは対応が難しい場合があります。
原稿の状態を確認したうえでスキャナを選定することが重要です。
事前に確認しておきたい項目
- 原稿サイズ
- 原稿枚数
- 用紙の種類
- 製本の有無
- ホチキス・クリップの有無
- 破れ・折れ・汚れ
- 経年劣化
- カラー・モノクロ
- 両面・片面
- 手書き文字の有無
- 個人情報・機密情報の有無
こうした情報を整理しておくと、電子化方法を決めやすくなります。
4.電子化後の用途に合わせてスキャン仕様を決める
電子化で特に注意したいのが、「とりあえず高画質でスキャンしておけば安心」という考え方です。
解像度が高くなるほど、必ずしも使いやすいデータになるとは限りません。
高解像度でスキャンすると、画質を高められる一方で、
- ファイル容量が大きくなる
- 保存容量が増える
- スキャン時間が長くなる
- データ処理に時間がかかる
- ネットワーク経由で扱いにくくなる
などの問題もあります。
そのため、
「電子化したデータを何に使うのか」
を基準に解像度を決めることが重要です。
例えば、
- パソコンで閲覧する
- 印刷する
- OCR処理する
- 長期保存する
- 図面の細かな線を確認する
- 画像として再利用する
など、用途によって適切な仕様は異なります。
5.ファイル形式とデータの整理方法を決める
スキャンする前に、**「完成したデータをどう保存するか」**も決めておきましょう。
代表的なファイル形式には、
- TIFF
- JPEG
- PNG
などがあります。
例えばPDFは、複数ページの文書を一つのファイルとして扱いやすく、一般的な文書の閲覧・共有に適しています。
一方、TIFFは画像品質を重視した保存などで利用されることがあります。
重要なのは、ファイル形式を選ぶことだけではありません。
大量のデータを電子化する場合には、
「どのようなファイル名を付けるのか」
「どのフォルダに保存するのか」
「文書番号や管理番号をどう付けるのか」
まで決めておくことが重要です。
例えば、
部署名_年度_文書種別_文書番号.pdf
のように一定のルールを作っておけば、電子化後の検索性を高めることができます。
6.機密情報・個人情報のセキュリティ対策を確認する
企業や自治体が扱う文書には、個人情報や機密情報が含まれていることが少なくありません。
例えば、
- 顧客情報
- 社員情報
- 契約情報
- 取引先情報
- 価格情報
- 技術情報
- 設計資料
- 官公庁の内部資料
などです。
そのため、外部業者へ電子化を依頼する場合には、「スキャンできるか」だけではなく、「安全に預けられるか」も確認する必要があります。
確認したいポイントとしては、
- 原稿をどこで保管するのか
- 作業場所への入退室管理はどうなっているか
- 作業エリアへの持ち込み制限はあるか
- データをどのように管理するか
- 納品データの受け渡し方法
- 作業終了後のデータ削除
- 原稿を廃棄する場合の方法
などがあります。
特に機密性の判断に迷う場合は、「これは重要ではないだろう」と自己判断せず、社内の情報管理ルールに従うことが大切です。
電子化における情報セキュリティについては、専門サイトでも詳しく解説しています。
7.自社で電子化するか、専門業者へ外注するか判断する
少量のA4文書であれば、社内の複合機やスキャナーを利用して電子化できる場合があります。
しかし、資料の量が増えるほど、スキャン以外の作業も大きな負担になります。
例えば、
- 原稿の仕分け
- ホチキス・クリップの除去
- スキャン
- ページ確認
- ファイル分割
- ファイル名変更
- OCR
- 画像補正
- データ整理
- 原稿の再整理
などです。
さらにA0・A1・A2などの大判図面や、製本資料、劣化した資料などは専用の設備や技術が必要になる場合があります。
そのため、
「自社でできるか?」ではなく「自社で行うことが合理的か?」
という視点で判断することが重要です。
自社の複合機で対応できるA4・A3文書と、大判図面や大量の紙資料では外注のメリットが異なります。
8.電子化後の紙原稿と電子データの扱いを決める
電子化が終わった後の紙原稿をどうするかも、事前に決めておきましょう。
選択肢としては、
- 原本を返却して保管する
- 社内で保管する
- 一定期間保管してから廃棄する
- 機密廃棄する
などがあります。
ただし、電子化したからといって、すべての紙原稿を自由に廃棄できるわけではありません。
文書によっては法令や社内規程、契約上の要件などを確認する必要があります。
そのため、電子化を始める段階で、
「電子化後の原本をどうするのか」
まで決めておくことをおすすめします。
電子化後の紙原稿を廃棄する際には、法令による保存義務や業務上の重要性を確認する必要があります。
電子化でよくある「失敗例」
ここまでの内容を踏まえると、文書電子化では次のような失敗に注意する必要があります。
失敗例1:何でも高解像度でスキャンしてしまう
「高画質なら安心」と考えて、すべての資料を必要以上の高解像度でスキャンすると、データ容量が膨大になる可能性があります。
対策:
電子化後の用途に合わせて仕様を決める。
失敗例2:不要な資料まで電子化してしまう
書庫にある資料をすべてスキャンすると、不要な資料まで電子データとして残すことになります。
対策:
電子化前に資料を整理し、重複資料や不要資料を確認する。
失敗例3:ファイル名を適当に付けてしまう
大量のPDFを「001.pdf」「002.pdf」のように保存しただけでは、後から内容を判別するのが難しくなります。
対策:
電子化前にファイル名やフォルダ構成のルールを決める。
失敗例4:OCRを付ければ何でも検索できると思ってしまう
OCRは便利ですが、原稿の状態や文字の種類などによって認識精度が変わります。
特に図面などは、一般的な文書とは性質が異なります。
図面ではOCRだけに頼るのではなく、図面番号や図面名称などの属性情報を台帳で管理する方法も検討できます。専門サイトでも、図面と文書では電子化の目的や重視する情報が異なると説明しています。
失敗例5:セキュリティを後から考える
機密文書を外部業者へ預ける場合、「どの業者に依頼するか」を決めてからセキュリティを考えるのではなく、業者選定の段階で確認することが重要です。
対策:
原稿管理、作業場所、アクセス管理、データ管理、原本廃棄などを事前に確認する。
文書電子化を始める前のチェックポイント
実際に電子化を開始する際には、次の項目を確認しておくとスムーズです。
- 電子化の目的を決めた
- 電子化する資料を整理した
- 不要資料・重複資料を確認した
- 原稿の種類・サイズ・数量を把握した
- 電子化後の利用方法を決めた
- 解像度を決めた
- カラー・モノクロを決めた
- ファイル形式を決めた
- OCRの必要性を検討した
- ファイル名・フォルダ構成を決めた
- セキュリティ要件を確認した
- 自社対応か外注か判断した
- 電子化後の原本の扱いを決めた
- 電子データの保存・バックアップ方法を決めた
この準備を行っておくだけでも、電子化作業を進めやすくなります。
電子化は「スキャンする前」の準備が重要です
文書の電子化は、スキャナーに紙をセットして読み取れば終わり、という単純な作業ではありません。
特に大量の資料を電子化する場合は、
目的を決める
↓
資料を整理する
↓
原稿を確認する
↓
仕様を決める
↓
セキュリティを確認する
↓
スキャンする
↓
検品する
↓
データを整理する
↓
原本を適切に管理する
という一連の流れを考えることが重要です。
また、電子化の仕様は資料によって異なります。
A4の一般文書とA1の図面では必要な設備もスキャン方法も異なり、製本資料や古い資料ではさらに慎重な取り扱いが必要になる場合があります。
当社では、一般的な文書資料だけでなく、大判図面や製本資料、古い資料など、さまざまな原稿の電子化に対応しています。
「何を電子化すればよいかわからない」
「どの解像度にすればよいかわからない」
「自社でやるべきか外注すべきかわからない」
といった段階でも、原稿の種類や数量、電子化後の用途を確認したうえで、適切な方法をご提案します。
文書・資料の電子化をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
